企業はどう“社風”に合う人を面接で採用しているのか?

キャリア採用
杉浦二郎

――社風を大事にして採用する、ということもよく言われます。

杉浦大事なことだと思います。コンピューターで言えばOSとアプリケーション。AndroidアプリはiOSでは動かない。どれだけスペックが素晴らしいものでもOSが合わないと機能しない。同じように、社風=OSは大事だと思います。特に日本企業は長く働く文化があるので、風土がある。そこに合わないと能力も発揮できない。逆に社風に合えば能力を発揮し続けられる可能性は高まります。採用される側が社風を認識し、理解して入社することは大事だと思います。

――しかし、社風は明確にあるものなのでしょうか。

杉浦難しいですね。社風をどのように判断して採用されるのか。採用側も、社風に合う人物かいかにして判断するのかと言うと、会った人の雰囲気や感覚に頼ることになりがちです。「ウチは体育会系で」「ウチは元気で」というふわふわしたものではなく、どんな人達が働いているのか、個人レベルの所まで落とし込む。自分はどういうタイプなのかも客観的に判断できるようにする。逆に言えば、こんな人はうまく機能しない、ということも定義できると思います。ふわっとした言葉だけで採用すると大きな間違いにつながる。社風は個人の集まりです。そこで働いている人達がどういうパーソナリティーを持っていて、どういうスキルを持っているかを可視化する。そうすればどんな人が社風に合うかを判断できるのではないかと思います。

――部署によっても空気が違うことがありますよね。

杉浦中途採用の場合は配属される部署がはっきりしているでしょうから、その部署がどういったネットワークで形成されているかを可視化できると良いですね。こういうキーマンがいるとか、超ワンマンな部長がいるとか。別な部署との連携が強くて、そういう部署にいる人達と合うタイプを採らないといけない、とか。そういうことが分析・可視化できるのであれば、そうした方が良い。ただ、残念ながら日本の企業でそこまでできている会社はそこまで多くありません。部署という単位ではなく、会社全体を見て「どんな人達が活躍しているのか」を洗い出し、そこに近い人を採用していく。まずはそこからだと思います。

――会社・部署・社風に合った人を選ぶのが絶対条件だ、と。

杉浦「社風」の定義そのものに気を付ける必要があると思います。「ウチはこういう会社だから」と、一言で表せるような社風は危険かと。どういう人達の集団なのかという、個の所まで落とし込んで見ることができないと、どういう人が社風に合うかはわからないはず。個人レベルの所まで落とし込んでいってあげるのが大事だと思います。

――会社によっては配属される部署の人が面接に立ち会うケースがあると思いますが、そういう面接をしないとミスマッチが起こりやすいということでしょうか。

杉浦本来はそれがベストだと思います。自分が配属される先の人達と会って、お互いを知って採用されていくプロセスがあった方が良い。できればインターンシップのような、就労体験的な経験があればなお良い。

――配属される部署から言えば、知らない人より知っている人の方が良いですよね。インターンなどで関係性ができると、その人が「入りたい」と言うから「入れたい」という気持ちが芽生えると思うのですが。ミスマッチ云々ではなくて。

杉浦部署が受け入れたいというのであれば、それで良いと思います。合う合わないは、実際に仕事してみないとわからない所もある。大事なのは、受け入れる側がきちんと認識して受け入れるかどうか。人事側が合わないと思っても、受け入れ側が合うと言うのであれば、それを正として採用するというのは正しいと思います。

――人事が判断するのは、実は難しいようにも思えます。

杉浦基本的には難しいです。その仕事、部署のことに精通していないわけですから。ただ、オペレーションの問題で、部門側は採用にばかりかまけてはいられない。効率性のためには人事が採用を担わなければならないという現実があります。

――人事の仕事としては、採用と言うより、明らかに合わない人を見極めてカットするという役割の方が強いのでしょうか。

杉浦いや、あくまで合う人をどう採用するかということが大事です。人事は採用のプロだと言われたりしますが、私からすればそうではない。特に中途採用であれば、その仕事のことを知っているのは部門の人達です。部門の人達の方がよくわかっている。それを我々が代わりにやるのだから、極めて客観的にちゃんと判断できるようにしておかねばならない。その怖さを理解しないといけません。

――最近では若い人が人事に行くケースも多いと思いますが、若いほど採用の面接などは難しいのでしょうか。

杉浦その通りです。面接は、能力のバリエーションと深さを測るものですが、自分が持っていないものは測れない。若くて年次・経験が浅いとバリエーションも少ないし、深まってもいないので、物差しがないのに相手を測ることになる。極めて危険です。結果として、感覚や好き嫌いで判断してしまう。だから私はなるべく面接は省いた方がいいのかな、という気がするし、面接に代わる指標軸を持てないとちゃんと人を判断するのは難しいと思います。

――中途面接で若い面接官が担当だったら、面接をしても無駄になる?

杉浦必ずしも無駄ではないですけどね。若くてもその会社の人なのですから、会社の採用の考え方など、何かしら持っているはずです。それを面接で聞くのは大事なことですよね。良くも悪くも、そういう人を面接官として出してきている以上は、その人をクリアしないと入れないわけです。それはもう、しょうがない部分ですよね。

――与えられたゲームはクリアしなければならない、と。

杉浦そうですね、受からないと意味がない部分もありますから。

杉浦二郎
取材先人物紹介:杉浦二郎
2015年9月まで三幸製菓株式会社の人事責任者、現株式会社モザイクワーク代表取締役。
三幸製菓では、「カフェテリア採用」「日本一短いES」などを生み出し、TV、新聞、ビジネス誌など取材経験多数。講演会の講師、採用コンサルタントの実績多数。地元新潟で産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組む。
杉浦二郎の記事はこちら